フランス北部のベルギーと国境を接するフランドル地方の料理「カルボナード」の紹介です。牛肉と玉ねぎをビールで柔らかく煮込む料理で、使用する材料はとてもシンプルです。ここでは、「フランドル風カルボナード」のレシピに加え、作り方のコツやアレンジ方法、フランス料理の古典での解釈なども紹介しています。
牛肉のビール煮込み「フランドル風カルボナード」の作り方
この料理は、牛肉をビールで煮込むことで肉がより柔らかくなり、風味も良くなる効果があります。薄切りの牛肉を使うことで煮込み時間も短くなるので比較的簡単に作ることができます。
【レシピ】フランドル風カルボナード
カルボナードのポイントは、牛肉の旨味を残さずビールで煮溶かすところです。この作業をデグラッセといいます。牛肉はモモ肉や頬肉といった脂の少ない部位を使ってください。
「フランドル風カルボナード」 (2人前)
材料
・牛肉(7mmスライス) | 200g |
・玉ネギ | 1/2個 |
・マッシュルーム | 4個 |
・ビール | 350ml |
・フォンドボー | 200g |
・塩 | 適量 |
・胡椒 | 適量 |
・薄力粉 | 適量 |
・オリーブオイル | 適量 |
作り方
- step①牛肉の下準備をする
牛肉に塩と胡椒で下味をつけ、薄力粉をまんべんなくまぶしておきます。
- step②玉ねぎとマッシュルームをカットする
玉ねぎは2cm幅のくし型に切り、マッシュルームは縦に二等分に切り分けてください。
- step③玉ねぎとマッシュルームをソテーする
鍋にオリーブオイルを熱して②の玉ねぎとマッシュルームを炒めます。
- step④牛肉を焼く
フライパンにオリーブオイルを熱して①の牛肉の両面を焼き焼き上がりにビールを一振り加え、フライパンについた肉の旨味ごときれいに③の鍋に合わせていきます。
- step⑤煮込み始める
すべての牛肉が焼き終わり、鍋に移し終わったら残ったビールを鍋に加えひと煮立ちさせアクをひきます。
- step⑥フォンドボーを加える
⑤の鍋にフォンドボーを加え再度沸騰したら鍋のふたをして煮込んでください。
- step⑦仕上げ、盛り付け
肉が柔らかくなったら、塩と胡椒でソースの味を整え仕上げ器に盛り付けて完成です。
カルボナードのコツや活用法など
紹介したレシピには記載していない仕上げのコツや、アレンジを紹介します。本来のレシピというより好みや季節に合わせて変えてみてください。
肉の旨味を「デグラッセ」でソースにする
カルボナードを作る際、肉を焼いたフライパンに、こびりついた肉の旨味を残さずにビールで煮溶かして煮込むソースにします。そのために、フライパンの火を消す前に余分な焼き油をキッチンペーパーなどで拭き取り、ビールを少し振り入れたら木べらなどでフライパンの肌をこそぎます。この作業をデグラッセといい旨味を無駄にしない大切な動作となります。(油を除く作業はデグレッセといいます)
カルボナードの仕上がりムラを無くすコツ
料理の仕上がりを均一にするために、できるだけ肉は同じ大きさにしておきます。当たり前のことですが、肉の厚さや大きさが違うと全体が同じ状態に仕上がらないため、同じ様に調理しても煮込みすぎたり煮込み足りないといったバラつきが発生します。全体の仕上がりを均一にすることが美味しい煮込み料理のポイントになります。もちろん、肉の厚さや部位によって煮込み時間が変わるので、煮込み時間自体は、その都度、肉の状態を確認しながら調整して下さい。
カルボナードを煮込む火加減のコツ
カルボナードに限らず、多くの煮込み料理に共通することなのですが、煮込む時にグラグラ沸騰するような火加減だと肉の仕上がりがぱさついてしまいます。煮込む時の火加減はできるだけ優しい火加減にすることで、肉の仕上がりとソースのまとまりなどが良くなります。イメージはプツ、プツと泡が出てくる程度です。
カルボナードの付け合せに関して
カルボナードで牛肉と一緒に煮込む玉ねぎとマッシュルームは、そのまま皿に盛りつけるので形を残して煮込むようにします。マッシュルームはスライスにしても良いですが、仕上がり時にできるだけ形を残すなら大きめに切ったほうが良いでしょう。玉ねぎに関しても煮込んだ後に形が残りやすいよう、繊維方向(縦)に切りそろえてください。今回は玉ねぎとマッシュルームだけですが、煮込みとは別にじゃがいものローストなどを付け合わせにしても美味しいです。
ソースにコクを出したい場合
ソースにコクが欲しい場合は、ソースの仕上げに冷たいバターをスプーン1杯程度混ぜながら溶かしていきます。今回のレシピは仕上がりを重く感じないようにバターは記載していませんが、好みで調整してください。
カルボナードを煮込む時に使うビールについて
基本的にビールの種類は味のしっかりしたビールの方が良いかと思いますが、特にこだわらなくても良いのではないかと思います。後述しているエスコフィエにはランビックの記載がありますが、ランビックは野生の酵母を使いホップを効かせた珍しいタイプのベルギービールです。ご自宅でカルボナードを作るならいつも飲んでいるビールで構わないです。
ソースを更に深い味わいにしたい場合はトマトを使う
カルボナードのソースを深い味わいにしたければ、少量のトマトペーストを使います。鍋で玉ねぎを炒めた後トマトペーストをスプーン1杯程度炒め合わせてから煮込みの鍋のソースを作ってください。その際ポイントになるのがトマトペーストを入れるタイミングです。必ず水分が入る前にトマトペーストを炒めるようにして加えてください。液体にトマトペーストを溶かしてしまうと酸味が出てしまいます。
ハーブやスパイスで、ビール煮込みを上品に
今回のレシピには乗せていませんが、ソースを上品に仕上げたい場合、ブーケガルニを煮込む時に使うといいです。ブーケ・ガルニが用意できない場合、パセリなどの軸や黒粒胡椒などを入れるといいのですが、その場合仕上げにソースを漉す必要があります。もしお茶用の不織布パックなどがあればそこに粒胡椒、各種ハーブ(パセリ、タイムなど)、セロリの葉やネギの葉先などを詰め、煮込む際に鍋に加えておけば仕上がり時に用意に取り出すことができます。
カルボナードの歴史、由来
カルボナードは歴史のある地方料理です。120年前にまとめられたエスコフィエのル・ギド・キュリネールにも記載がありますのでこちらも参考にしてください。
「カルボナード」料理名の由来
カルボナードはもともとビールの産地でもあったフランス北部、フランドル地方発祥の料理です。ところが、カルボナードの語源をたどるとイタリア語にたどり着きます。カルボナードの語源は、イタリア語の泡立つという意味の言葉、カルボナ−タです。
エスコフィエによる記載
カルボナード・ア・ラ・フラマンド
LE GUIDE CULINAIRE / A.ESCOFFIER
牛の脂の少ない部分(アンプかバルロン)1.2kgを短い薄切りにする。塩、こしょうをし、澄ましたマルミットの油で強く焼き色をつける。
同時に、大きな玉ねぎ5個分の薄切りを交互に重ね、真中にブーケ・ガルニをのせる
肉のソトワをビール1瓶(古いランビックがよい)でデグラッセし、とび色のフォン同量を加え、とび色のルー100gでつなぐ。仕上げに黒砂糖か粉砂糖50gを加え、こしてカルボナードにかける。ふたをしてオーヴンに入れ、低温で2.5〜3時間煮込む。
(注)カルボナードは普通、玉ねぎをそのまま入れて供するが、会食者の好みで裏ごししてもよい
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